2020年代のNPBにおける打撃タイトルをめぐる競争は、かつてとは様相が変わりつつある。大谷翔平のMLB移籍後に「NPBで見られなくなった二刀流の輝き」への惜別とともに、新世代の打者たちが次々と台頭している。
ヤクルトの村上宗隆は2022年の三冠王で時代の頂点を告げたが、その後もリーグを代表する長距離砲として四番打者の責任を担い続けている。ソフトバンクの近藤健介は出塁率の高さとミートの巧みさで毎年上位打線を牽引し、首位打者タイトルを複数回受賞してパ・リーグの顔となっている。オリックスの頓宮裕真は強打の捕手として本塁打王争いに名乗りを上げ、阪神の近本光司はスピードと確実性を武器に盗塁王を複数回獲得し、令和の「足のある1番打者」像を体現している。
打撃タイトルをめぐる意味も変化している。かつては「打率」こそが打者を評価する最高の指標とされた。しかし現代では出塁率・長打率を合算したOPSや、球場の大小・時代の違いを調整したwRC+などのセイバーメトリクス指標も注目される。それでも「首位打者」「本塁打王」「打点王」という3つの古典的タイトルが最も大きな称賛を集める構造は変わっていない。それはこれらのタイトルが持つ「物語性」——長いシーズンを通じた積み重ねと、最終盤の逆転劇や守り合いという劇的な展開——が、数字以上の感情をファンに与え続けているからだろう。
そして近い将来、あるいは今まさに現役のグラウンドのどこかに、次の王貞治が、次のイチローが、次の福本豊が育っているかもしれない。6つのタイトルは毎年リセットされ、また新しい挑戦者を待っている。それが日本のプロ野球が持つ、時代を超えた生命力の源泉だ。