諦めなかった男たちが、徳島から夢を掴んでいく

四国アイランドリーグplus / 独立リーグ最強の育成工場

徳島インディゴソックスは
なぜ毎年ドラフトで指名されるのか

独立リーグの選手がNPBドラフトで指名される確率は、約1%。その狭き門を、徳島インディゴソックスは13年連続でくぐり抜けてきた。高校・大学・社会人とすべての舞台で夢を掴めなかった者たちが、四国の地で再び腕を振る。なぜこの球団からだけ、毎年プロが生まれるのか。歴代ドラフトデータと育成の哲学から、その答えに迫る。

13年連続 NPBドラフト輩出  2013〜2025
13年連続
NPBドラフト輩出
34名超
NPB輩出選手数(創設来)
6名最多
2023年指名数(球団史上最多)

ドラフト指名の歩み(2013〜2025)

2013
1年目
東弘明 オリックス 育成1位
内野手として指名。連続輩出の起点となった記念すべき初年度。
2014
2年目
入野貴大 楽天 5位 山本雅士 中日 8位
投手2名が支配下指名。独立リーグ史上初の同年複数支配下指名を達成。
2015
3年目
増田大輝 巨人 育成1位 吉田嵩 中日 育成2位
増田大輝は後に巨人の支配下選手として長く活躍。
2016
4年目
木下雄介 中日 育成1位 福永春吾 阪神 6位
木下雄介は最速158km/hを誇る右腕として期待されたが、2021年に急逝。
2018
6年目
鎌田光津希 ロッテ 育成1位
右腕投手が育成1位として千葉ロッテへ。
2019
7年目
上間永遠 西武 7位 岸潤一郎 西武 8位 平間隼人 巨人 育成1位
上間はNPB初勝利を記録。岸は後に独立リーグ出身者の本塁打記録を更新。
2020
8年目
行木俊 広島 5位 戸田懐生 巨人 育成7位
戸田は後に支配下登録。KBOのNCダイノスへ移籍するなど国際的な活躍も。
2021
9年目
村川凪 DeNA 育成1位 古市尊 西武 育成1位
野手2名の指名。9年連続でNPBへの輩出を達成。
2022
10年目
中山晶量 日本ハム 育成2位 日隈モンテル 西武 育成2位 茶野篤政 オリックス 育成4位
10年連続達成。茶野は翌年開幕前に支配下登録、育成入団1年目での開幕戦出場は史上初の快挙。
2023
11年目 / 球団史上最多6名
椎葉剛 阪神 2位 宮澤太成 西武 5位 井上絢登 DeNA 6位 シンクレアJ 西武 育成1位 谷口朝陽 西武 育成2位 藤田淳平 SB 育成7位
椎葉剛が阪神2位指名で独立球団史上最高順位タイ。支配下3名は球団最多。シンクレアは球団初の左腕NPB輩出。
2024
12年目
加藤響 DeNA 3位 中込陽翔 楽天 3位 工藤泰成 阪神 育成1位 川口冬弥 SB 育成6位
加藤は独立リーグ出身野手として過去最高順位での指名。工藤は翌2025年に支配下登録・開幕1軍入り、川口も支配下へ。
2025
13年目(最新)
篠﨑国忠 中日 3位 岸本大希 広島 育成2位 髙橋快秀 ロッテ 育成2位 斎藤佳紳 西武 育成3位 安藤銀杜 西武 育成7位
篠﨑は最速157km/hを計測した193cm/100kgの大型右腕。5名指名で連続記録を13年へ更新。

注目投手 ピックアップ

椎葉 剛
しいば つよし
阪神 2位
2023年ドラフト
最速159km/hを計測した本格派右腕。独立球団史上最高順位タイで阪神に指名。2025年6月12日に埼玉西武戦でプロ初登板を果たした。
ILで22試合 39回 3勝 0敗 防御率2.31
中込 陽翔
なかごみ はると
楽天 3位
2024年ドラフト
43試合に登板し防御率1.97を記録したリリーフ右腕。楽天3位と本人も驚く高順位での指名に。2025年にNPB初登板を達成。
ILで43試合 59⅓回 8勝 2敗 防御率1.97
川口 冬弥
かわぐち とうや
SB 育成6位
2024年ドラフト
最優秀防御率・最多セーブの2冠を制した抑えの切り札。最速155km/hと鋭く落ちるフォークを武器に29試合で防御率1.37という圧倒的な数字を残した。2025年6月に支配下登録。
ILで29試合 59⅓回 3勝 0敗 7S 防御率1.37
工藤 泰成
くどう やすなり
阪神 育成1位
2024年ドラフト
2024年に最多勝タイトルを獲得。入団時153km/hだった球速が在籍中に159km/hへ向上。2025年3月7日に支配下登録され、阪神の開幕1軍メンバー入りを果たした。
ILで20試合 68回 8勝 1敗 防御率2.91
篠﨑 国忠
しのざき くにただ
中日 3位
2025年ドラフト
193cm・100kgの大型右腕。修徳高から入団し、最速157km/hをマーク。高校時代から7球団の調査書が届いた逸材で中日3位指名を受けた。
ILで19試合 47⅓回 2勝 4敗 防御率3.80
斎藤 佳紳
さいとう よしのり
西武 育成3位
2025年ドラフト
2025年に防御率1.88で最優秀防御率・10勝で最多勝の2冠を達成した技巧派右腕。33試合で71⅔回を投げ抜いた安定感が評価された。
ILで33試合 71⅔回 10勝 2敗 防御率1.88

なぜ速球派が多いのか ー 球速育成の仕組み

徳島からNPBに旅立つ投手には、150km/h超の速球を持つ本格派が目立つ。これは偶然ではない。 球団が長年かけて構築してきた「球速育成パイプライン」の産物だ。

Recent Draft Pitchers — Max Velocity
椎葉 剛(阪神2023) 159 km/h
工藤 泰成(阪神2024) 159 km/h
篠﨑 国忠(中日2025) 157 km/h
川口 冬弥(SB2024) 155 km/h
木下 雄介(中日2016) 158 km/h
S&C
専属S&Cトレーナーによる体系的強化
「インディゴコンディショニングハウス」が球団の専属ストレングス&コンディショニングトレーナーとして長年帯同。代表の殖栗正登氏は「球速向上プログラム」を書籍化するほどのメソッドを持ち、投手の身体強化を体系化している。独立リーグとしては異例の専門体制だ。
BIG3
BIG3合計500kg以上を課すウエイト文化
ベンチプレス・スクワット・デッドリフトの合計500kgを選手のノルマとする文化が球団に根付いている。工藤泰成は600kgをクリアしてチーム随一と評価された。パワーの土台を作ることが球速向上の前提として位置づけられている。
SCOUT
「球速素材」を意図的に集めるスカウティング
球団は「球速150km/hを超える選手も多数所属」と明言しており、スカウト段階から速球素材を意図的に集めている。NPBスカウトが球速を重視する現実を踏まえ、「速球素材を集め→専門的に鍛え→NPBが欲しがる球速帯まで引き上げる」パイプラインを戦略として構築している。
実例 01 工藤泰成(阪神2024年育成1位)
大学でのドラフト指名漏れを経て徳島に入団。「球速と同時に制球力を上げる」と誓い、ウエイトトレーニングで球速を向上させながら変化球で仕留める術を学んだ。入団時153km/hだった最速はシーズン中に159km/hまで向上。2025年3月に支配下登録、開幕1軍を掴んだ。
153 km/h → 159 km/h(+6 km/h)
実例 02 谷口朝陽(西武2023年育成2位)
地元徳島県出身の高卒1年目。殖栗トレーナーとは中学2年時から長期育成の関係にあり、「NPB入りを約束して5年」という間柄だった。高校時代144km/hだった最速は、入団からわずか4ヶ月で152km/hに到達。長期的な育成計画が実を結んだ事例だ。
144 km/h → 152 km/h(+8 km/h / 入団4ヶ月)

指名選手たちの声

東北楽天ゴールデンイーグルスから3位指名していただきました、中込陽翔です。今は本当に3位という順位にびっくりしていてまだ実感が湧いていませんが、これからたくさんの試合で登板し、ファンの方に愛される選手になりたいです。徳島に来て、人生が変わりました。

中込陽翔(楽天3位指名 / 2024年ドラフト)

福岡ソフトバンクホークスから育成6位で指名していただきました、川口冬弥です。名前が呼ばれない時間がずっと続いて不安な気持ちだったのですが、最後に指名していただいてとても嬉しく思います。徳島のたくさんの方々に支えられた1年だったので、この恩はNPBの世界で必ず返していきたいと思います。

川口冬弥(ソフトバンク育成6位 / 2024年ドラフト)

中日ドラゴンズから3位指名していただきました、篠﨑国忠です。中日ドラゴンズに高い評価をしていただいてホッとしています。まずは一軍で投げられるような体作りをして、来年を迎えたいと思います。

篠﨑国忠(中日3位指名 / 2025年ドラフト)

なぜ毎年輩出できるのか ー 5つの理由

01

オーナー自らが動く全国スカウティング

球団オーナーの荒井健司氏が直接、北海道から沖縄まで全国を飛び回り選手情報を収集する。見ているのは「身体能力と伸びしろ」。進路が決まっている選手を口説くこともある徹底ぶりだ。ドラフト指名の実績が積み重なったことで、今では「徳島でやりたい」と自ら希望する有望選手も増えてきた。

02

南社長によるNPBスカウトへの積極的なプレゼン

南啓介社長がNPB各球団のスカウトに選手を積極的にアピールし、長年にわたって信頼関係を構築してきた。「NPBへの選手輩出」を経営の柱に据えた戦略は、ドラフト指名が球団への育成対価収入につながる仕組みとも連動している。NPBドラフトで指名されると独立リーグ球団に契約金・年俸に応じた育成対価が支払われ、その資金が後輩選手たちの環境整備に還元される。

03

「強さ」と「輩出」の両立が生む好循環

独立リーグ全体で約1%しかドラフト指名の可能性がない中、徳島は毎年複数名を輩出してきた。チームが四国アイランドリーグplusで勝ち続けてきたことも大きく、実戦で鍛えられた選手たちがNPBスカウトの目に留まりやすい環境が整っている。実績が評判を呼び、有望選手が集まり、また実績が生まれるという正のサイクルが確立されている。

04

選手自身がスポンサーを持つ「自立の文化」

南社長がオーストラリアのアマチュアリーグでプレーした経験から生まれた制度がある。選手自身がのぼりスポンサーを募集し、自分のプレーを支えてくれる人がいることを肌で感じる取り組みだ。ただ野球をするのではなく、「自分で環境を作る」感覚を養うことで、選手としても人間としての成長を促している。この考え方が「プレーヤーとしても人間としても強いチームを作る」という球団理念の根幹にある。

05

監督「栄転」が示すコーチングの質

徳島インディゴソックスは監督が頻繁に交代することでも知られる。南社長はこれを「栄転」と表現する。NPBや上位リーグからコーチ・監督として引き抜かれることは、球団の指導力が外部から評価されている証拠でもある。指導者が入れ替わりながらも連続してドラフト指名選手を輩出できるのは、それだけ球団全体の育成システムが機能している証左と言える。

球団の素顔 ー グラウンド外のインディゴソックス

Offseason Life
選手がうどん屋で働く、異色のオフシーズン
球団運営会社は「宮武讃岐うどん」フランチャイズを運営している。オフシーズンに選手が店舗に立つこともあり、収入面のサポートと同時に「社会人としての自立」を促す場にもなっている。野球だけではない「人間形成」の場として機能している。
Academy
室内練習場「インディゴ・テクニカルファクトリー」開設
2023年8月、徳島市内の海岸沿い工業地帯に室内練習場を開設。ブルペン3箇所・ピッチングマシン4台を完備し、選手の練習拠点としてだけでなく、野球アカデミー事業の拠点にもなっており、地域の子どもたちとプロ志望選手が同じ施設で練習するという独自の環境が生まれている。
Community
400社近いスポンサーが支える地域密着
南社長就任時の2015年時点で約200社だったスポンサーは、現在400社近くまで拡大した。数を増やすだけでなく、企業と丁寧なコミュニケーションを重ねて「球団の思いを理解した上で応援してもらう」関係構築を重視している。ドラフトで指名された選手が球団の知名度を高め、さらに地域企業の共感を呼ぶ好循環が続いている。
Global
韓国・台湾へ広がるOBたちの活躍
NPBにとどまらず、KBO(韓国プロ野球)やCPBL(台湾プロ野球)へ進むOBも増えている。球団OBの宮路悠良がサムスンライオンズ、戸田懐生がNCダイノスと契約するなど、「徳島経由で世界へ」というルートが生まれつつある。
球団名に込められた「藍」への誇り
チーム名の「インディゴ」は徳島県の伝統的な染物「阿波藍(藍染)」と鳴門海峡の藍色に由来する。ロゴは布を縫い合わせた模様で「緻密さとチームワーク」を表現。マスコットキャラクターはホームベースを守るクモをモチーフにした「スパイダー」だ。ユニフォームや球団カラーに漂う深い藍色は、選手たちが全国から集まりながらも「徳島の色」を背負って戦うことを象徴している。地域の誇りを纏って夢を追う——それがインディゴソックスのDNAだ。

球団を変えた男 ー 南啓介社長

南 啓介(みなみ けいすけ)
株式会社パブリック・ベースボールクラブ徳島 代表取締役社長 / 2015年12月就任
大学卒業後、オーストラリアのアマチュアリーグでプレーした経験を持つ。当地で「自分でスポンサーを取ってきて野球をする」選手たちに触れ、選手の自立という概念を根本から学んだ。スポーツマーケティング・選手マネジメントを経て2015年に就任時、球団は2100万円の赤字を抱えていた。翌年度、NPBへの移籍選手に関する育成対価収入により球団史上初の黒字化を達成。以来、「人間的にも、プレーヤーとしても強いチームを作る」という方針のもと、スカウティング強化・NPBスカウトとのネットワーク構築・飲食事業・室内練習場の開設など多角的な球団経営を牽引している。ドラフト当日には自宅近くの神社に祈願しに行くという一面も。

選手がNPBに行きたいと願い、私たちフロントも本気でNPBで活躍してほしいと思っています。そのためにできることは何でもするし、何が足りないのか、どうすればいいのかも選手と一緒に考える。徳島インディゴソックスは”明確な目標”を持っている球団なんです。

南啓介 代表取締役社長(Real Sports誌インタビューより)

OBたちのNPBでの活躍

工藤
工藤泰成(阪神)
2025年3月7日に支配下登録 → 開幕1軍入り
支配下 & 開幕1軍
川口
川口冬弥(ソフトバンク)
2025年6月20日に支配下登録
育成→支配下
中込
中込陽翔(楽天)
2025年5月にNPB初登板を達成
NPB初登板
茶野
茶野篤政(オリックス)
育成入団1年目に支配下登録、開幕戦スタメン出場(史上初)、1年目に91試合出場
史上初の快挙
椎葉
椎葉剛(阪神)
2025年6月12日、プロ初登板を果たす
プロ初登板
戸田
戸田懐生(NCダイノス / 元巨人)
支配下登録後、KBOへ移籍(アジアクォーター枠)
KBO活躍

2026年ドラフト ー 今から目が離せない選手

2026年シーズンは開幕したばかりで、最終的なドラフト評価はシーズンを通じた実績に委ねられる。 ただし現時点で、徳島内外から注目を集めている選手がいる。

小林 禅(こばやし ぜん)— 投手・2年目 / 188cm・85kg

高校・大学でマネージャーを務めた後、大学2年の秋に「遊び感覚で投げたボール」で140km/h台を連発したことが転機となり投手に転向。約3年半のブランクを経ながら最速157km/hまで球速を伸ばした異色の経歴の持ち主だ。2023年の「あの夏を取り戻せ」大会では甲子園のマウンドで初球148km/h・最速152km/hを計測し全国的な注目を集めた。2025年シーズンは実戦経験の積み上げを課題として徳島に入団。同年ドラフトは指名漏れとなったが、本人は2026年を「支配下でドラフト指名」の勝負年と位置づけている。球団関係者は「投球時の重心の回転速度は大谷投手に匹敵するレベル」と評しており、ポテンシャルの高さは折り紙付きだ。変化球精度と実戦登板数がどこまで積み上がるかが今シーズンの焦点となる。

※上記はシーズン序盤(2026年4月時点)の情報に基づく紹介です。ドラフト指名の可能性はシーズン全体の成績・NPBスカウトの評価によって変動します。他にも有力候補が台頭する可能性があります。