青柳晃洋選手はなぜ阪神に戻らなかったのか?NPBの国内復帰ルールを解説
青柳晃洋選手の復帰が問いかけるもの
NPB国内復帰制度の欠落と改善への道筋
1. まずは事実関係の整理
- 2024年オフ:青柳晃洋選手はポスティングでMLB挑戦を表明
- 2025年1月:フィリーズとマイナー契約
- 2025年7月:リリース
- 同月:東京ヤクルトスワローズと契約
- 2025年9月15日:広島戦でNPB復帰登板
この復帰ルートは制度上まったく問題のない正当な動きである。
2. NPBには「古巣への優先交渉ルール」が明確に存在しない
最重要ポイント:
NPBには海外移籍から復帰する選手に対して、旧所属球団へ自動的な優先交渉権や保留権を与える明文化されたルールが存在しない。
そのため国内復帰時はどの球団とも自由に契約できる。有原航平選手が日本ハム → MLB → ソフトバンクという経路で復帰したのも同じ構造である。
3. 韓国・台湾と比べるとNPBだけ制度が薄い
主要リーグの比較をすると違いがはっきりする。
| リーグ | 復帰ルール | 旧所属の権利 |
|---|---|---|
| NPB(日本) | 明文化が不十分 | 自動的な優先交渉権なし |
| KBO(韓国) | 申請時の球団のみ契約可 | 最大4年の保留権 |
| CPBL(台湾) | 旧所属に優先交渉権 | 不成立時のみ他球団へ |
韓国と台湾は旧所属保護が制度として定着している。NPBだけはこの部分が曖昧であるため、ファン心理の納得感が生まれにくい。
4. よく誤解されるが論点は「選手の自由」ではない
「選手の自由を奪うのか」という議論は表面的である。現行NPBは選手の自由度が非常に高い制度になっている。
不足しているのは旧所属球団側の最低限の権利設計である。ここが欠落しているため復帰のたびに感情的な摩擦が起きる。
5. 制度改善に向けた実務的な提案
5-1. 国内復帰ルールの明文化
ポスティング申請時点の球団に3〜4年程度の優先交渉権を与える。
5-2. 例外規定の設定
旧所属が交渉放棄した場合や不当な低提示など、正当な理由があるケースでは他球団交渉を解禁する。
5-3. 復帰フローの可視化
「復帰意思表明 → 優先交渉 → 不成立 → 一般交渉」という流れを制度化する。
5-4. KBO・CPBLの運用を参照
日本のドラフト制度や契約年限との整合を取りながら導入を検討する。
5-5. 制度説明の図解化と公開
公式サイトで制度図を常設し、ファン理解を促進する。
6. 他の選手の事例—「古巣復帰」は特別ではない
筒香嘉智選手—巨人か古巣か、揺れた末の決断
2024年4月、MLBジャイアンツから自由契約となった筒香嘉智選手は、5年ぶりにDeNAへ復帰した。しかし、この復帰劇は決して順風満帆ではなかった。
当初は巨人との契約が有力視され、「基本合意した」との報道まで流れた。ところが、DeNAファンからは「なぜ巨人なのか」という強烈な声が上がり、SNSではバッシングが飛び交った。最終的に筒香選手はDeNAの3年契約(推定年俸3億円)を受け入れ、古巣復帰を果たした。
DeNAは筒香選手のメジャー挑戦時に「戻ってくる時はベイスターズで」と送り出していた。この信頼関係が、最終的な決断を後押ししたと言われている。復帰後、筒香選手は5月6日の初戦で逆転3ランを放つなど、期待に応える活躍を見せた。
秋山翔吾選手—古巣ではなく広島を選んだ理由
2022年6月、パドレス傘下3Aから自由契約となった秋山翔吾選手は、古巣の西武ではなく広島東洋カープへの入団を決めた。この決断は多くの野球ファンを驚かせた。
西武は2年契約を提示したが、秋山選手が目指す日米通算2000本安打(当時残り524本)の達成には不安が残った。一方、広島は3年契約を提示し、松田元オーナーからは「ボロボロになっても2000本を打ってくれ」と熱いメッセージを受けた。
さらに広島は、引退後も含めた長期的な関係を視野に入れて交渉に臨んでいた。単なる3年契約ではなく、10年、20年という将来を見据えた球団の姿勢が、秋山選手の心を動かしたと言われている。
復帰後、秋山選手は広島で主力外野手として活躍を続けている。
共通するのは「制度の不在」
筒香選手も秋山選手も、どちらもFA権を使わず、MLB自由契約後の国内復帰という形をとった。青柳選手と同様、「古巣に戻るかどうかは選手と球団次第」という状況だった。
筒香選手は結果的に古巣復帰、秋山選手は新天地を選択。どちらも正当な選択だが、明確なルールがないため、ファンの感情的な反応や球団間の駆け引きが表面化しやすい構造になっている。
7. 結論—問題は「ポスティング」ではなく「国内制度の欠落」
青柳晃洋選手が阪神ではなくヤクルトに復帰した最大の理由は、NPBに古巣復帰を前提とした明確な制度が存在しないためである。
今後も同様のケースは続く。選手の挑戦の自由、球団の納得感、ファンの理解を両立させるには国内復帰ルールの再設計が必要ではないだろうか。
【参考】
- KBOおよびCPBLの復帰関連制度を扱ったコラム
- 海外移籍選手の国内復帰に関する制度解説
- 青柳晃洋選手の復帰報道(2025年7〜9月)
- 有原航平選手の復帰事例(日本ハム → MLB → ソフトバンク)