NPBからメジャーへ!ポスティング制度という”夢の扉”

二人の主砲が歩んだ異なる道 — ポスティング制度の光と影
NPB → MLB / Posting System

二人の主砲が歩んだ
異なる道

村上宗隆、岡本和真、今井達也。2024–25オフシーズン、ポスティングシステムが再び日本球界を揺るがした。

2025年12月–2026年1月 / ポスティング制度解説

加速する日本人選手のMLB挑戦

2024–2025年のオフシーズンは、日本のプロ野球ファンにとって特別な時期となりました。元三冠王の村上宗隆選手、巨人の不動の4番・岡本和真選手、そして西武のエース今井達也選手。三人の主砲・エースが、ポスティングシステムを通じてメジャーリーグへの扉をノックしました。

イチロー選手、松坂大輔選手、大谷翔平選手、山本由伸選手。多くのスター選手がこの制度を利用してMLBへと羽ばたいていきました。しかし、その仕組みや背景には、選手・球団・ファンそれぞれの複雑な思いが交錯しています。

ポスティング制度とは何か

ポスティング制度は、海外FA権を持たない選手が所属球団の承認を得て、MLBの全30球団と交渉できる仕組みです。申請期間は毎年11月1日から12月15日までで、申請後45日間が交渉期間となります。

この制度の特徴は、申請までは球団主導ですが、その後の移籍先選定や契約交渉は選手側が主導する点にあります。選手にとっては海外FA取得を待たずに若いうちから挑戦できるチャンスとなり、球団にとっては主力選手を失う代わりに譲渡金を得られる制度です。

譲渡金の計算は契約総額に応じて変動します。メジャー契約の場合、契約総額の2500万ドルまでは20%、2500万超から5000万ドルまでは17.5%、5000万ドル超は15%を乗じた金額が所属球団に支払われます。

25歳ルールという壁

25歳未満かつプロ経験6年未満の選手は、マイナー契約に限定されます。このルールが大谷翔平選手や佐々木朗希選手のような若手スター選手に適用され、本来得られるはずの評価や報酬が制限されました。球団が受け取る譲渡金も少額となるため、若手選手のポスティングは球団側のメリットが小さいのが実状です。

それでも佐々木朗希選手を送り出したロッテのように、選手の夢を優先する判断もあります。一方で、主力流出による戦力ダウンを懸念し、ポスティングを認めない方針を取る球団があるのも実情です。

✦ ✦ ✦
村上 宗隆
MUNETAKA MURAKAMI / ヤクルト → シカゴ・ホワイトソックス

2022年に56本塁打で三冠王を獲得し、王貞治氏が保持していた日本人シーズン最多本塁打記録を塗り替えた村上選手。NPB通算8年で843安打・打率.270・246本塁打・OPS.951という圧倒的な実績を引っ提げ、25歳でポスティングに挑みました。

56試合 2025年出場
.273 2025年打率
22本 2025年本塁打
47打点 2025年打点

米移籍大手「MLBトレード・ルーマーズ」はFA全体4位にランクし、8年1億8000万ドル(約284億円)のメガディールを予測。しかし、NPBでの高い三振率(直近3シーズンで28%超)とゾーン内コンタクト率の低さ、守備面への懸念から市場は慎重な反応を見せました。ESPNによると、複数球団が「年俸を抑えた長期契約」をオファーする中、村上選手は「短期だが高額な契約」を選択し、28歳で再度FA市場に出てMLBでの実力を証明する道を選びました。

2025年シーズンは左脇腹の負傷で56試合出場に留まりましたが、22本塁打・OPS1.043と復調の兆しを見せました。交渉期限まで残り1日となった12月21日(日本時間22日)、シカゴ・ホワイトソックスとの合意が電撃発表されました。

$34M / 2年
約53億7000万円
背番号 #5
ヤクルトへの譲渡金 約10億3900万円
2027年シーズン終了後FA権取得

入団会見で村上選手は白いソックスを掲げてファンの笑いを誘いながら、「短くても長くても、しっかり野球と向き合って成長することを目標に来ようと思っていた。まだまだ僕の人生は続くので、ここでしっかりスタートして頑張っていきたい」と前を向きました。

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岡本 和真
KAZUMA OKAMOTO / 巨人 → トロント・ブルージェイズ

「日本のヤンキース」とも称される読売ジャイアンツが全盛期の主力野手をポスティングで送り出すのは、2002年オフの松井秀喜選手以来の快挙。29歳の岡本選手は空振りの少ない完成度の高い打者として高評価を受け、2018年から2023年まで6年連続30本塁打以上を記録しています。

69試合 2025年出場
.327 2025年打率
15本 2025年本塁打
49打点 2025年打点

2025年シーズンは5月に左肘靱帯損傷で69試合の出場に留まりましたが、打率.327・OPS1.014と本来の力を示しました。ブルージェイズは2025年のワールドシリーズでドジャースを最終第7戦まで追い詰めた強豪で、交渉期限が日本時間5日午前7時に迫る中、2026年1月4日に電撃合意が発表されました。

$60M / 4年
約94億円
背番号 #7
契約ボーナス 500万ドル(約7.5億円)含む
オプトアウト条項なし/巨人への譲渡金 約17億円

入団会見で岡本選手は「トロントに世界一を持って帰ってくるためにすべてを出し切ってプレーしたい」と力強く語りました。移籍の決め手について「30球団のロゴを娘に見せたところ、ブルージェイズを選んだ」という微笑ましいエピソードも披露されました。

今井 達也
TATSUYA IMAI / 西武 → ヒューストン・アストロズ

2025年シーズンはキャリアハイとなる防御率1.92・奪三振数リーグ2位の圧倒的な成績を残しました。シーズン中に5完投・リーグ最多となる3完封を達成し、6月17日の横浜DeNA戦では松坂大輔氏が持っていた球団記録を更新する1試合17奪三振の快挙も達成。前年2024年も25試合の先発で10勝8敗・防御率2.34・187奪三振でリーグ最多奪三振タイトルを獲得しており、2年連続でパ・リーグを代表するエースとして君臨しました。

24登板 2025年登板数
10勝 2025年勝利数
163.2回 2025年投球回
1.92 2025年防御率
$54M / 3年
約84億8000万円(最大約98億8000万円)
背番号 #45
毎年オプトアウト条項付き
100イニング達成で300万ドル加算

ポスティングで移籍した投手では山本由伸選手・田中将大選手に次ぐ史上3番目の高額年俸となりました。毎年オプトアウト条項が付帯しており、活躍次第でさらなる大型契約を狙える設計になっています。

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3選手の契約比較

選手 移籍先 2025年成績 契約 特記
村上 宗隆(25歳) ホワイトソックス 56試合・22HR
打率.273・47打点
2年 $34M
約53.7億円
28歳で再FA
岡本 和真(29歳) ブルージェイズ 69試合・15HR
打率.327・49打点
4年 $60M
約94億円
オプトアウトなし
今井 達也(27歳) アストロズ 24登板・10勝
163.2回・防御率1.92
3年 $54M
約84.8億円
毎年OA条項付き

ポスティング制度の光と影

選手にとってのメリット

  • 海外FA権取得まで9年間待つ必要がなく、肉体的・技術的にピークの年齢でMLBに挑戦できる
  • 全30球団と交渉できるため、希望に合った球団を選択可能
  • 世界最高峰の舞台で大型契約を勝ち取るチャンスがある

球団にとってのジレンマ

球団には譲渡金という経済的メリットがある一方、ポスティングはあくまで選手を移籍させる制度です。移籍後にNPBに戻る際は自由契約扱いとなるため、古巣の球団やファンが心情的に受け入れがたい側面も持ち合わせています。

有原航平選手や上沢直之選手のように、ポスティングで移籍後わずか1〜2年でNPBに戻り、しかも別球団に移籍するケースが問題視されています。日本ハムの新庄監督は「ポスティングで行って1年でダメでソフトバンクに行く、この流れはやめてほしい」と苦言を呈しました。

制度改善の必要性

ポスティングには以前から不備を指摘する声があり、改正を経て現行のものに至っています。NPBに早期復帰する選手が増えている現状を鑑みると、復帰時の規定見直しなど、さらなる改善が求められる時期かもしれません。

おわりに — 夢と現実の狭間で

村上選手、岡本選手、そして今井選手。三者三様の道のりは、ポスティング制度の可能性と課題を浮き彫りにしました。期待された大型契約が実現しないケースもあれば、新たな環境で高評価を勝ち取るケースもあります。

それでも、選手たちは世界最高峰の舞台を目指して扉をノックし続けます。その背中には、日本のファンの期待と、球団の複雑な思いが交錯しています。

ポスティング制度は、選手の夢を叶える扉であると同時に、NPB全体の将来を考えさせる問いでもあります。彼らの活躍を見守りながら、私たちはこの制度の意義を改めて考える時期に来ているのかもしれません。

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